こんばんは。@ラジグラです。
先日、尊敬する診療放射線技師の方からお言葉をいただき、やる気が湧いている状態で熱い鉄は早く打て!ということで更新しようと思います。
今回は、以前の記事で書かせていただいた「毛細管現象」についてやりたいと思います。
参考記事 [必見]これが私のする胸部レントゲンの読影方法だ![完全保存版かも]
胸水なんてすぐにわかる!と思いの方
実は自分もそう思っていました。でも、ある呼吸器内科の先生から教えていただいたのですが、片側胸水であれば、肺に疾患があることを示唆し呼吸器内科へ!両側胸水で全身のどこかに原因があれば、依頼元に戻して治療をするそうです。(全国的にというわけではなく)そのため、少量胸水でもわかったらすぐにその振り分けをして原因を見つけて、最善の治療を開始するそうです。つまり、早く少量胸水を見つけることでこの振り分け作業が早くなり、治療につなげることができるということになります。
まず、胸水について
胸水とは胸膜(壁側)と胸膜(臓器側)の間にある潤滑油の役割をしている液体を胸水といいます。健常者にも少量ではありますが、存在しています。そして、学生さんに胸水の話をするとよく肺水腫と混同していることが多々あるので少しだけ説明します。
まず、連想していきましょう。バケツとビニールで覆ったスポンジです。バケツが胸郭、内側のオレンジの線が壁側胸膜になり、スポンジが肺、スポンジを覆ったビニールが臓器側胸膜になります。
そして、正常時はこんな感じになり、水色部分に胸水が正常者でも少量あります。さて、胸水が溜まっているのと、肺水腫を図にしてみました。
周りにある胸水がなんらかの原因で増えたことによりスポンジ(肺)が圧迫されるのを胸水が溜まるといいます。また、正常者と変わらない胸水でなんらかの原因でスポンジの中に水が溜まったことを肺水腫といいます。
胸水増加の種類(原因)
胸水が増える原因は簡単に分けて2つあります。
- 胸膜が炎症を起こしたり、血管透過性が亢進したことにより増える(片側胸水が多い):「滲出性胸水」
- 胸膜から漏れ出る、つまり浸透圧のバランスが崩れて増える(両側胸水が多い):「漏出性胸水」
ここで始めに書いた片側胸水と両側胸水が結びつきます。でも、実際放射線検査では断定は出来ませんので胸水検査をします。よく言われる「Light基準」を用いてやるのですが、今回は割愛します。
胸水を鑑別にはCP-Aだ!
胸部レントゲンで胸水を鑑別するにはおそらくこれは一番のゴールデンスタンダードで誰しもが知っている「CP-A(肋骨横隔膜角)の鈍化」だと思います。
画像で「CP-A」に矢印、その角に線を入れました。これは明らかに「右CP-Aの鈍化がわかると思います。では、この患者の胸水の量はどれくらいなのか?正常例で説明をしていきます。
わかりずらい図なのですが、それぞれ線の説明をしていきます。赤が横隔膜の線で、側面にその高さがわかるように赤線を引きました。後肺野の底部の線を緑で書きました。赤線の同様に側面で高さがわかるように緑線を引きました。正面像ではっきり「CP-Aの鈍化」を確認するには後ろに伸びた肺野(青い範囲)に胸水がたまり、側面図の1番、2番を超えないと正面図でははっきりわからないです。ポイントは後ろに伸びている肺野(青い範囲)を埋めるほどの胸水がないといけないということになります。そのため、上の例では、結構な水の量が溜まっており、大体300から500mlあります。
今回の例でも同じように前肺野の底部を赤線、後肺野の底部を緑線で書きました。正面像で後肺野に伸びている部分は見づらいですが、大体の目測で見ることはできます。今回は、大体青い範囲の部分に胸水が溜まっていることになります。結構胸水が溜まっていることがわかると思います。では、次の症例です。
今回は、肺炎については置いておきます。正面像、側面像で「CP-Aの鈍化」を見ていきます。
「CP-A」が見えるところに赤矢印とその角に赤線を入れました。正面では「CP-Aの鈍化」がわかりづらいので少量だということがわかり、側面像だと「CP-Aの鈍化」がわかります。
そして、見づらかったので横隔膜の線を青線で書きました。これでどっちに溜まっているかわかるようになったと思いますが、左肺に溜まっていることがわかったと思います。正面では少量胸水がわかりにくく、側面像の大切さが少し伝わりましたでしょうか?また、右と左の横隔膜を側面で鑑別する方法は以前の記事を参照してくださいね。
参考記事 [新人必見][肺シリーズ2]胸部レントゲン、胸部CT、肺疾患を読影するならまず、解剖を知るべきだ!
では、毎回胸部XP2方向で依頼が来るということはありません。1方向の時はどうするのか?という話になってくると思います。
正面像でも胸水に気づくには「毛細管現象」を使おう
さて、「毛細管現象」の話をしていこうと思います。毛細管現象とは、細い管状物体(毛細管)の内側の液体が管の中を上昇(場合によっては下降)する現象のことです。言葉ではわかりづらいので図解していきます。
参考URL
たらいに水を入れておきます。そして、真空になっている管を入れると水が入り込んできて、たらいの水位よりも高く上方に向かって登ってきます。このことを毛細管現象といいます。大切なことは下から上に向かって強い力がかかっているために水が上がってくるということです。
では、これをどう正面像の読影に活かすか!?ということになります。
左のCP-Aが鈍化しているような、していないようなという胸部レントゲンだと思います。淡くなっている感じ。比較読影できれば問題はないのですが初見では比較できません。拡大してみると確かに淡いが、鈍化までは認めにくいことがわかります。しかし、よく見ると外側から押されて凹んでいるように見えませんか?これは下から胸水が毛細管現象で上がってきていることを示し、下から上に向かって強い力がかかっているため胸膜(臓器側と壁側)の間が太くなって肺を押している状態を示します。これだけでは胸水とはっきりと言えなくても「2方向へ変えませんか?先生」と電話の一本くらいは入れることが出来ると思います。そうすれば、少量胸水の鑑別に向いている側面像で確定させることが出来ますよね?ということで「技師ならではの読影補助、撮影のサポート」に繋がればいいなと思います。
というわけで今回は本当に長い記事になってしまいました。最後まで読んでいただいた方ありがとうございます。
では、また!
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カテゴリ: メディカル
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