結構、MR担当の日って骨盤MRI検査多いのよね
そして、結構サイズが大きかったりプロトコルをいじるの大変なんだよね
子宮MRI検査での解剖学的評価
子宮筋腫の画像診断の第一選択は経膣超音波検査が挙げられるが、やっぱりMRI検査に求められるのは組織コントラストではないかと思います。また、広い範囲を評価できるという点で考えても日常のMRI検査の占める割合は大きいのかと
組織コントラストから考えるとやはりT2強調画像(T2WI)が特有の層構造を描出可能でシーケンスの中では最重要になってきます。一旦、解剖学的評価から考えていきましょう!
体部(内側から) | 頸部(内側から) |
高信号を示す内膜(endometrium) 低信号を示すjunctional zoneと 中等度を示す外層筋膜(myometrium) | 淡い高信号を示す頸管上皮(cervical mucosa) 低信号を示す頸部間質(cervical stroma) 中等度を示す筋層 |
ここでT2強調画像(T2WI)の信号強度について見てみると高信号・淡い高信号・中等度・低信号とバリエーションに富んでいることがわかり、コントラストに重きをおいて撮像したくなります。しかし、骨盤内は様々なアーチファクトの原因(蠕動運動等)があり、コントラストに重きを置きすぎてシャッタースピードの遅いシーケンスではブレによる画質低下が起きてしまいます。下の画像を見ていただければわかりますが、左の画像はアーチファクトが出ています。もしかするとエコースペーシング(Echo Spacing)を詰めることで右のようなアーチファクトの少ない画像を撮像できる可能性があります。
シャッタースピードについては以下の記事を参考にしてください!
また、放射線医学会の画像診断ガイドライン(2021年版・第3版)産婦人科の中には以下のコメントがされており、コントラストが重要でブレなく撮ることは私たち診療放射線技師の腕の見せどころなのかなと思います。
婦人科疾患の診断の基本はFSEでのT2強調画像であり、SSFSEやHASTE、SSFPといった梗塞撮像法ではコントラストが変化するので代用すべきではない
画像診断ガイドライン(2021年版・第3版)産婦人科
子宮筋腫と子宮腺筋症について
子宮筋層病変が疑われる場合は、質的診断(筋腫と腺筋症の鑑別など)が求めれるます。この違いがわかればMRIのシーケンスのなにが重要なのかわかってくると思います。
- 子宮筋腫
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T2強調画像(T2WI)で境界明瞭な低信号。周囲筋層への圧排や偽被膜性構造。
筋層内筋腫・粘膜下筋腫・漿膜下筋腫・頸部筋腫と位置により名称変更あり - 子宮腺筋症
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T2強調画像(T2WI)でjunctional zonと類似した境界不明瞭な筋層内の等信号から低信号。境界不明瞭なことから圧排がない、偽被膜がないなどがある。異所性内膜はT2強調画像点状の高信号として広く散在
ほかにも子宮筋腫に関してはFIGOのサブクラス分類が存在する。本当にブレている画像は先生方の苦労につながるかもしない…
- FIGO1:筋層内に存在し、子宮内宮成分が50%以上
- FIGO2:筋層内に存在し、子宮内宮成分が50%未満
- FIGO3;筋層内に存在し、内膜に接している
- FIGO4:筋層内に存在し、内膜に接していない
- FIGO5:漿膜下へ突出し、筋層内成分が50%以上
- FIGO6:漿膜下へ突出し、筋層内成分が50%未満
- FIGO7:有茎性に漿膜下煮存在する
- FIGO8:頸部に存在する病変
漿膜下筋腫の際には、子宮筋層との連続性を示すbeak signや子宮筋層から連続する栄養血管が確認(Bridging vasular sign)が認められるときがあります。また、T2強調画像(T2WI)で高信号域を呈する場合は、良悪性の鑑別が必要となるので、嚢胞変性や水腫様変性、粘液様変性、脂肪平滑筋腫などが挙げられます。T2強調画像(T2WI)で高信号域と判断するには、子宮筋層外層と比較するか大臀筋や大腰筋と比較するなどの方法があります。
意識するパラメーターについて
T2強調画像(T2WI)はT2値が長い=横緩和が長く信号の減衰が遅い組織を高信号にする画像ということなので、子宮のT2値を少しまとめてみた(*1 https://patents.google.com/patent/WO2012050170A1/jaより抜粋)
T2値(1.5T) | T2値(3.0T) | |
子宮筋層 | 117±14 msec | 79±10 msec |
子宮内膜 | 101±21 msec | 59±1 msec |
子宮頚部 | 58±20 msec | 74±9 msec |
参照元には、junctional zoneの記載がないが子宮頸部より信号が高いことを考えると1.5Tでは約80msecあたりではないかと推察します(あくまで仮定。これは考え方次第だとは思うのですが、三層構造(筋層、内膜、juctional zone)の中のTEを一番低いところで撮るか一番上で撮るかはそれぞれの施設によるので参考になればと思います。
TEとの兼ね合いにはなるが、ETLがシャッタースピードに値するので多めにすることでEcho Spacingが短縮して蠕動運動などに対応できるが、MT効果の兼ね合いで脂肪の信号上昇とコントラスト低下があるので気をつけていきましょう!目標としたいエコースペーシング(Echo Spacing)は4.5msecあたりで。またShot durationも同様に短くしたほうが画像は止まったように撮像することができます。
やはり、デメリットはコントラスト低下。基本に立ち返るならダミーパルスを少しいれることで緩和することができる。ここにMRIの奥深さ(いい言い方で)が出てくる!
子宮筋腫・子宮腺筋症を読み解くのまとめ
私たち診療放射線技師も疾患を知ることでなにを意識したパラメータが設定できるか明解になる場合がありますね!先生たちに最良の画像が提供できるようになりたいので骨盤MRIでよく遭遇する子宮筋腫・子宮腺筋症について記事にしました。
- 骨盤内腔は蠕動運動や呼吸アーチファクトが多い
- アーチファクト低減にはETLやEcho Spacingを意識したパラメータ
- TEについてはそれぞれの施設でTE:80msec – 110msecでなにを最良に描出するか決める
- 子宮筋腫・子宮腺筋症では低信号病変となり、辺縁評価が必要になる
- T2強調画像(T2WI)で高信号の場合は