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CT検査で遭遇する心嚢液貯留とは?心タンポナーデなの?

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新人技師

この偶発的に見つかる心嚢液貯留って心タンポナーデに繋げていいの?

ラジグラ

基本的には別の概念ということで思考の直結はだめかな

目次

心嚢液貯留と心タンポナーデの定義を整理

診療放射線技師はCT検査を担当する医療従事者で画像を撮影したら、医師よりも先に画像を見ることがほとんどです。その際に、心嚢液貯留に遭遇することがしばしあります。遭遇した際にすぐに心タンポナーデに直結させてしまい、緊急時対応するときがあります。しかし、心嚢液貯留」と「心タンポナーデは別の概念であるため、一旦整理をしていこうと思います。

  • 心嚢液貯留

心臓を包む心嚢内に液体が貯留した状態

  • 心タンポナーデ

心嚢を包む心嚢内の液体が心臓を圧迫し、心臓の機能(特に拡張)が障害される状態

つまり、心嚢液貯留は画像所見であり、心タンポナーデは機能障害であるということがわかると思います。なので、画像所見から機能障害を直結することは危険であるということです。

心タンポナーデの評価について

心タンポナーデの評価は超音波検査がゴールデンスタンダードとなっており、右心房収縮期の虚脱・右心室拡張期の虚脱・弁通過血流の異常な呼吸性変動(E波など)・非特異的ではあるが下大静脈の膨張が評価項目

心嚢液貯留の原因は?

心嚢液貯留で問題となるのは、量だけでなく貯留液が蓄積するスピードが問題に関係してきます。徐々に貯まる場合は、心嚢が伸びて大量の貯留液に対応できるようになるのであまり問題にならないことがあります。では、原因疾患についてまとめてみましょう。

原因疾患
  • 特発性

原因が特定されない(全体の20-30%)

  • 炎症性疾患
  • ウイルス性心膜炎
  • 細菌性心膜炎
  • 結核性心膜炎
  • 膠原病(SLE:全身性エリテマトーデス)(RA:関節リウマチ)
  • 腫瘍性疾患
  • 転移性心膜炎
  • 原発性心膜腫瘍
  • 外傷性
  • 胸部外傷:鈍的外傷・穿通性外傷
  • 手術後合併症
  • 循環器系疾患
  • 心筋梗塞後症候群(Dresseler症候群)
  • 大動脈解離
  • 代謝性疾患
  • 尿毒症(慢性腎不全でよく見られる)
  • 甲状腺機能低下症(粘液水腫の一環として引き起こす)

CT画像だからできること:CT値測定

原因疾患が多岐にわたることから画像所見を丁寧に拾っていくことが重要になってきます。そして、忘れがちなCT値でもできることがあるのでやっていきましょう。ここでは単純撮影の画像で測定をおすすめします。

案外、便利なCT値って忘れ去られてしまうのでしょうか?

ちょっとしたテクニック

  • 漏出液(Transudate)
  • CT値:0 – 10 HU
  • 主な原因
    • うっ血性心不全
    • 甲状腺機能低下症
    • 尿毒症(腎不全)
  1. 浸出液(Exudate)
  • CT値:10 – 25 HU
  • 主な原因
    • ウイルス性心膜炎
    • 細菌性心膜炎
    • 結核性心膜炎
    • 膠原病(SLE・RA)
  • 血性(hemorrhagic Effusion)
  • CT値:30 – 60 HU(新鮮な血液の場合は35 – 45 HU)
  • 主な原因
    • 外傷性心嚢液貯留
    • 大動脈解離
    • 心筋破裂

万が一、血性となれば大動脈解離が想定されますので大動脈の評価をしなくてはなりません。そして、CT値を測定して、心膜の肥厚も一緒に確認しておきましょう。正常は2mmとされています。また、胸膜にも肥厚像が確認できれば、細菌性胸膜炎や結核性胸膜炎はじめ、悪性中皮腫や転移性腫瘍(胸膜転移)などが想定できます。

超音波検査から考えられるCT所見

まずは、下大静脈(IVC)の確認からやっていきます。非特異的所見なので補助的な役割となります。大体、CT検査は吸気で検査を施行しますが、おそらく補助的な役割担ってしまう理由のひとつに呼吸法が挙げられます。胸式呼吸と腹式呼吸とでは横隔膜の動きが変わり、腹圧などに影響がでてしまい下大静脈(IVC)測定にばらつきがでてしまうということです。評価部位は肝静脈との合流部付近とされています。

下大静脈(IVC)の怒張基準は2.5cmを超える場合、怒張と判断されることが多い

ここで肝静脈の拡張・浮腫性胆嚢壁肥厚(漿膜下浮腫)確認も一緒に行いましょう。右心不全を除外していきましょう!

余裕があれば、上大静脈(SVC)の確認も一緒にするのも有りだと思います。臨床三徴といわれる低血圧・静脈怒張・心音減弱から考えて、頸静脈の評価を間接的に評価できるためです。上大静脈(SVC)が隣接する胸部大動脈の直径より大きいか評価をします。

次に右房・右室の虚脱についてです。心拍同期CTが理想ですが、非心拍同期CTでも性的な虚脱を評価していくことができる場合があります。

  • 右室評価
    • 右室前壁の虚脱:心嚢内液体に圧迫される形で右室前壁がつぶされている
    • 右室のサイズが著しく収縮し、扁平化している場合は虚脱とする場合がある
  • 右房評価
    • 右房壁が内側に押しつぶされている
    • 特に右房の前壁が圧迫されて、扁平化や凹形を示す場合

ゴールデンスタンダードの検査は心エコーなので、慎重に判断していくことが重要!

心嚢液貯留に遭遇したら まとめ

まとめになります。心嚢液貯留は量も大事ですが、貯留していったスピードも重要となります。そのため、心嚢液貯留→心タンポナーデという直結は安易となります。せっかく撮った画像がありますので、確認するところをしっかり評価していくことが重要となります。

STEP
心嚢液の性状評価
STEP
心膜および胸膜の評価
STEP
下大静脈・上大静脈の確認
STEP
右心系(右房・右室)の静的評価

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