昨日、久しぶりにMRI担当が回ってきたからSpin Echo法(SE法)のT2強調画像(T2WI)を復習しながら、時間短縮してやるーなんて思ってたんだけど!
週替わりなんだね、モダリティ担当。んで、なんで怒り気味なわけ?
T2WIはFast Spin Echo法(FSE法)で、教えてもらったこと使えないじゃん!
あーそのことw例に挙げた撮像時間は現実的じゃないことは気付いてよ!でも、SE法じゃないってことに気が付いたのは感動!
あーって!?FSE法ぐらい気がつきましたよ!例で言ってた撮像時間が現実的なことは感じなかったわw早くそのFSE法を教えて!
Fast Spin Echo法(FSE法)を理解する前に!
MRIの基礎をシリーズは、原理というよりも撮像時間の数式から理解してMRI理解の向上を目的に攻めています。どうしても、この理解法だとSE法が必要になってくるのでご理解を!まず、SE法の撮像時間の数式を思い出しましょう!
いよいよ本題となるFSE法を理解していこう!
SE法の撮像時間の数式は簡単な数式なので覚えてられると思います。で、今回のFSE法になると上の式が変化します。どんなように変化するか、難しくならないか不安の方いるかもしれませんがむちゃくちゃ簡単な変化です!
撮像時間=TR × Phase Matrix × NSA / ETL(エコートレイン)
解説していくとSE法で使っていた撮像時間の数式をエコートレイン(ETL:echo train length)という値で除しています。数式の変化は簡単だからETL(エコートレイン)を理解してしまえば、FSE法も原理を抜いてでも理解できそうな気持ちになりません?撮像時間に関して言えば、ETLが大きくなればなるほど、数式から考えて時間短縮になるということがわかると思います。
ELTはなにを指すの?
ETLはメーカーによって言い方が違います。
- 日立メディコ社:E-factor
- Philips社:turbo factor
- Canon社(旧Toshiba社):エコーファクター
まーややこしいですよね。ベンダーによって言い方が変わるってo(`ω´ )oSE法のシーケンスを思い出していきましょう!
これも学校で習ったり、国試にでることで結構頭に残っていますよね。これに数式にあったETLが混ざり込んでFSE法になります。では、FSE法のシーケンスをみていきましょう。みてもらうとわかるように180°パルスを複数回かけて、複数のエコーを収集しているのがわかると思います。つまり、収集するエコーの数が増えたことによって、SE法より早く収集できることもわかりますよね?なので撮像時間の計算式でETLで除しているというのも繋がると思います。
上のFSE法はTRに対して180°パルスを3回打ち、3個のエコーを収集しています。3個の180°パルスをだしているので、「ETL:3」と表します。ETLを6にすれば、ETL3のときよりも撮像時間はさらに半分になります。多ければ多いほど、撮像時間は短くなり、トレードオフでなにかを失いますw
そして、感のいい方は気付いたと思いますが、エコー時間(TE)がなくなっています。SE法では1個目のエコーを収集する時間をTEとしていましたが、FSE法は複数のエコーを取得するのでどこのエコー収集した時間をTEとするかわからなくなってしまいます。しかし、エコーは収集しているのでどこかをTEと言わなくてはいけませんので、TEの名称が変わり、「実効TE」といいます。そして、180°パルスによって得られたエコーのの間隔を「Echo Spacing」といいます。さて、難しくなって来る予感しますよね…
そもそもTEってなに?
TEはTR同様、T2WIとT1強調画像(T1WI)の値は違います。TEというのは、SE法でいうならエコーを取る時間というのはシーケンス(上図)からわかると思います。そして、FSE法になるとエコーが複数あるのでTEという概念が崩れます。そのため、実効TEという定義がでてきました。もうTEの理解を避けて、次に進むことはできないと感じたと思います。ということでTRと同じようにある程度のTEを範囲で使いますので、大前提として覚えましょう!(SE法・FSE法の場合)
T2WI(T2強調画像) | TE → 100 msec 前後(80 – 120 msec) |
T1WI(T1強調画像) | TE → 20 msec前後 |
もちろん、これにはTRの時と同じようにT1(縦緩和)とT2(横緩和)とPD(プロトン密度)の話をすっ飛ばしました!あしからず!
実効TEってなに?
「よし、撮像時間の数式のETLがわかったし、TEも範囲内で使えばいいってことだからFSE法も簡単じゃん!」となればいいのですが、そう簡単には問屋がおろしてくれないところがMRIの難しさなんですよね…
先ほども説明したようにTEの概念がエコーが複数あることでわからなくなってしまいます。では、TE(実効TE)を決めるための新しい数式を覚えましょう!
実効TE= Echo Spacing × k空間の中心を埋めたエコーの本数
♪───O(≧∇≦)O────♪キターーーーー!k空間!これ、苦手意識が全開ででてしまうワード!でも、簡単に考えましょう。数式を読み解くとk空間の中央に入るTEを算出しているだけです。
下図の左がk空間の説明になります。中央部分の白い部分は低周波成分とよばれ、「コントラスト」に影響します。周辺の黒い部分は高周波成分とよばれ、「分解能」に影響します。もうこれだけです。
「k空間の中心を埋めたエコーの本数」の部分がわかりにくいとは思いますが、また、下の図(中央・右)をみてください。上のシーケンスはETL = 3 なので、k空間を埋める本数は3本になります。
k空間の埋め方が中央と右が違います。番号はk空間を埋めた順になり、赤い矢印が1番はじめにk空間を埋めたことを意味しています。k空間の中央を埋めた本数が変わっていることがわかります(中央は1番目・右は2番目)。また、埋め方がk空間の一番上から埋めた場合は、「k空間の中心を埋めたエコーの本数」は ETL / 2 = 3 / 2 = 1.5(小数点の場合は繰り上げ) = 2 ということも覚えましょう。では、実際に計算をしていきましょう!Echo Spacingを10msecとします。
- 上から順番にk空間を埋めた場合
- 実効TE = 10 msec × 2 = 20msec
- 中央からk空間を埋めた場合
- 実効TE = 10 msec × 1 = 10 msec
計算値でみるとk空間の埋め方の違いで10 msecの違いがでました。つまり、実効TEが変わるということもわかったと思います。なので、実効TEがずれるということは画像のコントラストがずれてしまいます。言い換えると低周波成分に入る実効TEの値がずれているから低周波成分(コントラスト)がずれるとなります。
では、ETLが3だった撮像方法をETLを6にして半分の時間短縮を目的とした場合も考えてみましょう。
- 上から順番にk空間を埋めた場合
- 実効TE = 10 msec × 3 = 30msec
- 中央からk空間を埋めた場合
- 実効TE = 10 msec × 1 = 10 msec
ここで言いたいことは、埋め方が真ん中から埋めている場合は、実効TEが変わらないので画像のコントラストは変わりません。そして、撮像時間も半分!ナイスな使い方です。しかし、一番上から埋めていた場合は、実効TE(コントラスト)部分は 20 msec → 30 msec になるので画像のコントラストが変わってしまいます。これでは撮像時間短縮の目的に失う代償は大きいですよね!ということで以下のポイントを押さえましょう!
ここでわかったことは充填方法によってコントラスト(実効TE)が変化するということ。実効TEの値から考えると中央からk空間を埋めるほうがT1WI(T1強調画像)に適しているということがわかりました。
いまさらながら充填方法には以下のように名前があります。
- 上から順番にk空間を埋めた場合
- 「sequential」または「linear」
- 中央からk空間を埋めた場合
- 「centric」または「low-high」
T2WIで実効TEを考えてみる!
やっと本題であるT2WI(T2強調画像)について話ができますね!では、前の記事の例であげたT2WIの撮像時間(TR: 5000 msec・Matrix: 256・加算回数: 1)を再掲しますね。そして、ELTを10と設定して撮像時間を計算すると
SE法:5000(TR)× 256(Matrix)× 1(加算回数)= 1280000 msec = 約22分
FSE法:5000(TR)× 256(Matrix)× 1(加算回数)/ 10= 128000 msec = 2分8秒
となります。だいぶ現実的な撮像時間になったと思います。で、ここでELTが10の状態でEcho Spacingを 20 msecとします。そして、実効TEを計算してみましょう。
真ん中からk空間を埋めた場合:実効TE = 20 msec × 1 = 20 msec
一番上からk空間を埋めた場合:実効TE = 20 msec × 5 = 100msec
では、この実効TEの数値と大前提となるTEを合わせてみましょう!
T2WI(T2強調画像) | TE → 100 msec 前後(80 – 120 msec) |
T1WI(T1強調画像) | TE → 20 msec前後 |
気づきました?k空間を上から詰めるとしっかりT2WIのTE(上の例だと100 msec)が大前提の範囲になります。しかし、TR5000のT2WIの撮像時間で、k空間の真ん中から埋めてしまうとTE(上の例だと20 msec)がT2WIの前提からずれてしまうため、画像のコントラストが得られなくなります。ということでT2WI(T2強調画像)を撮像する場合は、上から順番にk空間を埋める「sequential」「linear」がいいということですね。
なんかMRIを使いこなせそうな気になってきませんか?(*´∀`)♪
FSE法はELTも大きくすれば撮像時間が短くなるんだね!?
FSE法はとても便利で、ELTを増やすだけで撮像時間が短くできることが数式からわかったと思います。しかし、MRIはパラメータをいじることで常にトレードオフが発生してきます。ELTを増やすと以下のデメリットが増えますので注意してください。原理とかは補足記事に書きますね!
- SNR(信号対雑音比 signal-to-noise ratio)が低下します
- ブラーリング(ぼけ)の増加
- MT効果により脂肪信号が高くなり、コントラストが低下
- jカップリング効果により脂肪信号が高くなり、コントラストが低下
FSE法のまとめ
今回は、FSE法の記事を書きましたがMRIの難しさが出てきた感じになったと思います。しかし、数式を覚え、わからない部分を補填していけば理解は難しくはないと思います。では、まとめていきますね!
- 撮像時間 = (TR(繰り返し時間) × 位相数(Matrix)×加算回数)/ ETL(エコートレイン)
- ETLは1TRの間に取得する180°パルスの数、その180°パルス間をEcho Spacingという
- TEの概念が実効TEとなった
- 実効TE = Echo Spacing × k空間の中心を埋めたエコーの本数
- k空間の中心は低周波成分でコントラストに影響する
- k空間の中心周囲は高周波成分で分解能に影響する
- k空間の埋め方には、種類がある(centric, sequential等)
- ETLを増減するとk空間の埋め方によって実効TEがずれるので注意が必要
- T2WIはk空間を上から埋めるほうがいい
- T1WIはk空間を中心から埋めた方がいい
- ELTの増加は、撮像時間を短縮するがトレードオフとしてSNR低下・ブラーリング(ぼけ)の増加・MT効果、jカップリング効果により脂肪信号が高くなり、コントラスト低下がある
まとめが長いよ!!!
繋がりを大切にしたら、記事の切りどころがなくなって自滅したよ
まとめが長いよ!!!
繋がりを大切にしたら、記事の切りどころがなくなって自滅したよ
でも、簡単な理解で済んだからあっさりいけたけどね。
理解できたならよかったですよ!
あー、今日でMRI担当おしまい…また1ヶ月後MRI担当…この記事のことを現場で使えないじゃん!
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