最近、外傷CTによくあたって、血腫多いんだよね
で、なにでそんな困り顔?
血腫はわかるけど、あとなに見るかわからないw
脳ヘルニアとかどう?
脳ヘルニアについて
脳ヘルニアは、脳実質が本来の領域から他領域へ偏位することをいいます。まずは種類をみていきましょう。
- 帯状回ヘルニア(大脳鎌下ヘルニア)
- 鉤ヘルニア(海馬ヘルニア・下行性テント切痕ヘルニア)
- 正中ヘルニア
- 大後頭孔ヘルニア(小脳扁桃ヘルニア)
- 上行性脳幹ヘルニア(上行性テント切痕ヘルニア)
硬膜外血腫(EDH)や硬膜下血腫(SDH)があった際には血腫が大きい場合や脳の腫脹によって圧迫され、脳ヘルニアになる可能性があります。上のイラストのようにCOR画像があれば確認がしやすいので再構成を作ると良いと思います。
もう少し脳ヘルニアを詳しく
帯状回ヘルニアが頻度的に多く、Monro孔の圧排による対側脳室拡大や側脳室下角が開大することが特徴的です。また、鉤ヘルニアより先にでることがおおく、重要なサインにもなります。
鉤ヘルニアはテント上腔の圧が高くなった際に、迂回槽を介して圧を逃がそうとして下方へヘルニアするのが特徴です。迂回槽はとても狭い部分なので、脳ヘルニアになると中脳を圧迫をしたりします。迂回槽はAX画像のほうがみやすかったりしますね!(下図参照)
すこし考え方をまとめてみます。
左円蓋部に血腫があったとします。上腔内では左から右へ圧がかかっていることになります。さらにだんだん脳の腫脹もあり圧が高まっていきます。そうすると圧を逃がすために帯状回ヘルニアが発生し、圧を逃がし始めます。しかし、対側脳室拡大や前大脳動脈を圧排しはじめ、脳の腫脹が悪化をたどるとテントの上腔で圧をおさめることができなくなってくるので、今度は鉤ヘルニアをが発生し、圧を下腔へ逃がし始めるということになってきます。
流れがわかるとわかりやすいですよね!そして、見るべき場所もそんなに多くないので再構成画像(COR & SAG)を作れば診断の補助ができるのかなと思います。
たとえはテント上腔での圧上昇でしたが、テント下腔での圧上昇も同じように考えれば大後頭孔ヘルニアや上行性脳幹ヘルニアもわかると思います。
大後頭孔ヘルニアはテント下腔で圧が高くなることで小脳下部が大孔内へ陥入しますし、上行性脳幹ヘルニアでは四丘体槽を介してテント下腔の圧をテント上腔へ逃がします。
脳ヘルニアで気をつけることは?
各脳ヘルニアが原因で様々な事が起きます。一部にはなりますが、下記に記載しました。
- 帯状回ヘルニア
- 前大脳動脈遠位部圧迫による脳梗塞
- 鉤ヘルニア
- 変異により対側の大脳脚に押し付けれ、Kernohan’s notch(Kernohan切痕)という脳損傷を来す
- 脳底部血管に牽引裂傷が生じて、中脳出血(Duret出血)を起こす
- 大後頭孔ヘルニア
- 延髄が後方より圧排され、延髄圧迫症状が発生
脳ヘルニアを見る中でとても重要なことは、切迫脳ヘルニアがあるかどうかという部分になってきます。切迫脳ヘルニアがある場合は、血腫の除去や除圧など処置が必要になることがあります。
- 大きな占拠病変の存在(EDHやSDHなど)
- 5mm以上の正中偏位
- 脳底槽の圧迫や消失
脳ヘルニアのまとめ
硬膜外血腫(EDH)や硬膜下血腫(SDH)があった際には、再構成画像(COR & SAG)が役に立ちますのでぜひ作成してください!
- 脳ヘルニアには種類がある
- 帯状回ヘルニア(大脳鎌下ヘルニア)
- 鉤ヘルニア(海馬ヘルニア・下行性テント切痕ヘルニア)
- 正中ヘルニア
- 大後頭孔ヘルニア(小脳扁桃ヘルニア)
- 上行性脳幹ヘルニア(上行性テント切痕ヘルニア)
- テント上腔もしくは下腔での圧を逃がす方向を考えると見るべきポイントがわかりやすい
- 切迫脳ヘルニアには注意が必要!
- 大きな占拠病変の存在(EDHやSDHなど)
- 5mm以上の正中偏位
- 脳底槽の圧迫や消失