胸部ポータブルで再現性とか質なんて考えるの?
案外、盲点だよね!案外簡単なことでできるから比較してみるか
そもそも臥位と座位どっちがいいの?
ポータブル撮影をしてると指示内容で「胸水確認のため座位」とある場合があります。たしかに肋骨横隔膜(CP-angle)が鈍化(dull)していることを確認できれば「胸水がある」と言えますが、経時的に観察をする場合が多くあり、再現性が求められます。つまり、胸水が判別できて、再現性が高いというのがベストになるということになります。すこし撮影方法で再現性について比較していきす。
- Technique, radiation safety and image quality for chest X-ray imaging through glass and in mobile settings during the COVID-19 pandemicより抜粋 ↩︎
再現性の比較のために上に比較画像をだしました。再現性が高くするためにはフィルム(パネル)に対してのX線の入射角度、体位の再現性などがポイントになってきます。
比較項目 | 座位撮影 | 臥位撮影 |
---|---|---|
撮影距離 | △ | △ |
患者角度(ベッド角度) | △ | ◯ |
フィルムへの入射角度 | △ | ◯ |
患者の安定性(左右の安定性など) | △ | ◯ |
ここからわかることは再現性という観点からは「座位撮影」より「臥位撮影」がいいケースが多いということ。
臥位撮影での問題点について(呼吸編)
さて、臥位撮影をしていると体格のいい患者さんを撮影すると下の画像のように肺野がつぶれて、せまくなっていることがありません?
これを回避するための方法として、呼吸の仕方というのが挙げられます。立位撮影は内臓が重力により下に下がるのであまり気にしないですが、臥位だと内臓の重みにより横隔膜の動きに制限をかけてしまいます。
では、この内臓による横隔膜の動きの制限を解除するか?この答えは「呼吸方法」になります。
呼吸法の違いによる画像の変化を上に出しました。こんなに差が出る場合があります。さて、どのような呼吸をさせたか?が気になりませんか?
答えは「腹式呼吸をさせた」です。
腹式呼吸をさせることで内臓を以下のように動かすことができます。
もうひとつポイントがあります。体格のいい患者さんへ「腹式呼吸で息を吸ってください!」と伝えても、うまくいきません。普段、胸式呼吸が多いのに突然腹式呼吸と言われるとうまくできるはずも…
ここは事前に「鼻で呼吸することができますか?」「鼻詰まっていませんか?」と確認してから「次の息止めは鼻から息を吸って、息を止めてください」と伝えましょう。
さて、再掲にはなりますが左肺の肋骨横隔膜角(CP-angle)を見てください。吸気不足の左側(左肺側を比較)は鋭角です。吸気がしっかりできている右側(左肺を比較)は不明瞭になって、若干鈍化していますよね?
つまりは吸気をしっかりしていないと間違った情報を出してしまうということにもなります。改めて、吸気の大切さがわかります。
臥位撮影での問題点について(胸水編)
さて、再現性の観点から「臥位撮影」がいいとわかったと思います。しかし、臥位撮影にはデメリットもあり解消方法について少し解説をしました。もう一度、今回比較することになったはじめの話を思い出してみましょう。
「胸水確認のため座位撮影」
さて、臥位撮影は再現性は有利ですが、胸水確認ができなくては意味がありません。座位(立位)にすることで肋骨横隔膜角(CP-angle)が鈍化(dull)になり、一目瞭然なので悩むことが少ないです。この胸水の有無についての問題を臥位撮影でも解消しなくては本末転倒になります。
また、肋骨横隔膜角(CP-angle)が鈍化するには条件があります。一般的に肋骨横隔膜角(CP-angle)が鈍化するには、胸水が300 – 500mlないと鈍化しにくいと言われています。
あるポイントをおさえると臥位撮影で胸水を観察することができます。また、このポイントに胸水が溜まる原理を考えると座位撮影の場合の300 – 500mlよりも少量胸水でもわかるようになります。
臥位撮影で胸水の有無を確認するポイント
臥位撮影において胸水の有無を確認をするポイントは「肺底部のエッジ」になります。では、原理について解説していきます。下に肺底部のCT画像を用意しました。
少量胸水を模擬した青い範囲を書き込みました。胸水が溜まった際には、基本的には内側と外側で高さはほぼ変わりはありません。背中側からの水位という考えでいけば、わかると思います。臥位撮影において外側のほうが内側より高い位置にありますので、埋めるには内側より胸水が多くないとエッジが埋まらないということがわかります。逆をかえせば、内側は少量の胸水で埋まるので、肺底部の内側のエッジがみえなくなっていれば胸水があるということになります。
胸水を模擬した左のCT画像はおそらく外側の肺野部分がある(胸水で埋まっていない)ので臥位撮影をした場合、肋骨横隔膜角(CP-angle)は鈍化してないと思います。
症例で確認
さて、再掲にはなりますがさきほどは左肺を確認しました。吸気の大切さを気づかせてくれた症例です。CT画像でも胸水を確認できます。今度は右肺を見てみましょう。右肺の肋骨横隔膜角(CP-angle)は鋭角です。しかし、肺底部のエッジは確認できません。つまり、胸水があることが示唆されます。同様にCT画像をみるとしっかり少量胸水が確認できます。
ここは私達の技術の魅せどころになりますが、このように体格のいい患者さんはしっかり管電圧などの条件を設定しないと肝臓の背側が白潰れしてしまう条件では見えなくなるということです!
胸部ポータブル撮影で再現性と質が高い撮影するには?のまとめ
胸部ポータブル撮影でどの体位がいいのか、胸水の例を使って説明をしました。最後にまとめていきましょう。
- 再現性の観点から考えると臥位撮影が好ましい
- 胸水確認の際には、肺底部のエッジを確認することで臥位撮影でも少量胸水を確認できる
- 診療放射線技師の腕の魅せどころがある
- 体格のいい患者さんは、「鼻呼吸で息止めをおこなってもらう」
- 肝臓背側が観察できる条件を気をつける